この作品では、著者が自身の好きな劇団を見に行った話を綴っています。その劇団とは著者が学生のときに一度だけ見たもので、今回改めて彼は十年ぶりにその劇場を訪れました。劇を拝見する際、彼は劇団員たちが「その十年間に於いて、さらに驚嘆すべき程の円熟を芸の上に加えたであろうと大いに期待して」いました。ですが、現実の彼らというものは全く十年前と芸が変わっていませんでした。しかし、著者はここでもう一度、芸が〈変わらない〉ということを思い返してみるのです。実は芸が変わらないということは相当の努力の証であり、この努力がなければ、芸は落ちる一方であると彼は考えたのです。進歩だけではなく、維持もまた芸を磨き高みを目指している何よりの証拠となっているのです。
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