赤とんぼは、三回ほど空をまわって、いつも休む一本の垣根の竹の上に、チョイととまり、昨年の夏の「可愛いおじょうちゃん」との思い出を思い出しています。
はじめて彼女と会った時も、赤とんぼはその竹にとまっていました。そして「可愛いおじょうちゃん」を見つけると、その赤いリボンの帽子にとまってみたくなりました。ですが、おじょうちゃんが怒ることを恐れて、赤とんぼ少し悩みました。やがて赤とんぼは意を決しその帽子にとまってみました。果たして、その時の彼女の反応とは。
この作品の良さは、〈決して言葉を交わすことの出来ない2人がこころを通わせる〉というところにあるのです。
赤とんぼは少女の言葉が理解できても、自分の言葉を発する事が出来ません。一方少女も自分の言葉は発することは出来ても、赤とんぼの言葉を理解は出来ません。こうして見ると、二人の間にはかなりの隔たりがあるように感じます。ですが少女は子供ながらの感性なのか、赤とんぼが考えている事を正確に理解し、心を通わせることが出来たのです。ここに物語のラストを感動させる要素があるのです。
私達は当然互いの言葉も理解できますし、自分の気持だって伝える事ができます。しかし、それでも相手に上手く気持を理解してあげられなかったり、逆に理解してもらえなかったりと人間関係で四苦八苦しています。だからこそ、ここまで心を通じ合わすことが出来る二人の別れのシーンは、私たちに深い感動を与えているのです。
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