2011年11月7日月曜日

海亀ー岡本綺堂

 妹が帰郷してから一カ月あまりの後、8月19日の夜、「僕」は本郷の親戚からの電報で突然の彼女の死を知らされます。そして、日光の山で勉強していた彼は、翌朝の早朝に山を降り、実家へと戻りました。そこで彼は妹の許嫁であった、浜崎の一人息子の清との再会を果たします。そして、「僕」は彼の口から妹の死の原因について聞かされるのです。さて、妹は何故突然亡くなってしまったのでしょうか。
この作品では、〈正しくないと分かっていながらも、それを反論できないある男〉が描かれています。
まず、清の話によると、妹の死んだ原因はある迷信が関係しているといいます。それは、「ここらじゃあ旧暦の盂蘭盆に海へ出ると必ず災難に遭う」というものです。彼らは丁度、旧暦の盂蘭盆に小舟へ乗り、海へ遊びに出ていたのです。そして、その夜、彼らはこの迷信の通り災難に遭ってしまいます。それは、彼らが舟を戻して帰ろうとした時の事でした。なんと、海亀が彼らの目の前に現れ、はじめは1匹、続いて2匹……5匹……15匹と、徐々に数を増やして彼の舟を囲んでしまったのです。更に海亀たちは舟へと這い上がり、舟を沈めてしまったというのです。そうして、海の中へと沈められた妹は、水を多く飲んでしまい、死んでいってしまったのです。無論、これは恐らくは迷信ではなく、何か根拠があってのことだということは彼ら自身も良く理解しています。ですが、その出来事を上手く説明出来ないために、清は「僕は昔からの迷信を裏書きするために、美智子さんを犠牲にしたようなものだ。」と、その悔しさを吐露しているのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿