脚本作家であるピエエル・オオビュナンはかつて自分が恋をしていた田舎の女性、マドレエヌ・スウルディエ(現在は結婚していてジネストとなっている)からある1通の手紙を受け取ります。その内容とは、夫が他の女性と関係を持っており離婚したいと考えている。しかし、自身の体裁を考えると周りの人々に知られたくなく、途方に暮れているので相談に乗って欲しい。一度うちに来てはくれないか、というものでした。ですがピエエルはこの手紙から、マドレエヌが自分と不倫して夫に復習したいという気持ちがある事を感じ取り、一人の男としての好奇心からではなく、作家としての好奇心から彼女のもとを尋ねる事を決心します。
しかしその当日、ピエエルは彼女のもとを尋ねたにも拘らず、散々待たされた挙句、その家の下女からマドレエヌは彼に会う事が出来ないと伝えられてしまいます。
そしてその後日、ピエエルは彼女から再び手紙を受け取る事になるのです。さて、そこには一体どのような事が書かれていたのでしょうか。
この作品では、〈相手を思う気持ちが強いあまり、かえってその相手と二度と出会えなくなってしまった、ある女性〉が描かれています。
第2通目手紙の内容に触れる前に、一度ピエエルが第1通目の手紙を受け取った時、彼は何を考えた上でマドレエヌのもとに行くことを決心したのかを整理してみましょう。一通目を受け取った時、彼は彼女が何故自分にそのような手紙を書いたのかを考えてみることにします。そして彼は、マドレエヌは現在39歳であり40歳が目前に控えている年齢であるから、その前に彼女にとって6歳も若い自分と遊んでおきたかったのではないか、恐らく夫への復讐心もそうしたところからきているのだろう、という考えに至ります。そして次に、彼は彼女のそうした淫らな気持ちを想像した上で、自分はどういう決断をすべきかを考えはじめす。やがてピエエルは自分にこうした経験がないことから、これは脚本のネタになるのではないかと考えはじめ、興味を引かれていったのです。
ですが、いざそうしてマドレエヌのもと訪ねても、彼女は彼のもとには現れませんでした。その変わりに、彼は彼女から2通目の手紙を受け取ったのです。そして、そこには彼女の旨のうちがありありと書かれていいました。
そもそも彼女は一部でピエエルが指摘している通り、彼に会いたいが為に一通目の手紙を送りました。ですが、彼が彼女の家を訪れ待っている姿を隠れて垣間見た時、彼女は自分が考えていた以上に彼に好意を抱いていたことを理解します。しかし田舎の女である彼女は、結婚と恋愛を分けて考える事がどうしても出来ません。つまり結婚して夫がいる彼女にとって、ピエエルと交際することは不実なものに他ならないのです。またそうかと言って、ピエエルが自分に本気になり結婚するとも、考えられません。例え交際をしても、本気にならない彼が彼女に飽きてしまうのは目に見えています。そこで彼女は、ピエエルに対する自分の気持を優先すべく、二度と彼に会わない事を心に決めていったのです。
この本を読んでいろいろ考えました。それはなぜなのか、多くの書評を参照して、一番すっきりと教えてくださいました。ありがとうございました。
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