著者はこの作品の中で、三井と三田という自身の友人2人の死について述べています。その中でも、特に三田について描かれています。この三田という青年は、口数はどちらかというと少なく、真面目で、詩について勉強していた人物のようです。そんな彼は大学を出た後、すぐに出征し、その先で死んでしまいます。その死ぬまで間、彼は著者に向けて手紙を4通程送り、その中の1通がこの作品を書くきっかけになったと言います。それは一体どのような内容だったのでしょうか。
この作品では、〈ある道のために死んでいった、ある日本一の男児の姿〉が描かれています。
まず、著者が心うたれたという1通が下記のものになります。
御元気ですか。
遠い空から御伺いします。
無事、任地に着きました。
大いなる文学のために、
死んで下さい。
自分も死にます、
この戦争のために。
彼は、この中の「死んで下さい」という表現に心うたれています。この時、三田は戦争の為、明日の日本の為にまさにその身を捧げようとしています。そこから彼は文学も同じで、その身を捧げる覚悟でやらなければならないと述べているのです。またそういった意味では、三田にとって、作家も兵隊も命を捧げるという意味では、同じものであったと言えます。この彼の心こそが著者が感動しているものの正体なのです。人はついつい形上の立場や権力に奪われ、その人物を判断してしまいがちです。ですが実際は作家、兵隊等の立場に問題がある訳ではなく、問題はその志であり、自身の道にどれだけ身を捧げられるかが問題なのです。
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