2013年11月25日月曜日

ヘレン・ケラーはどう教育されたかー1887年5月16日

 ヘレンが言葉を使いはじめてからというもの、彼女はサリバンとの会話を楽しんでいるようです。そしてサリバンはそのような彼女との授業をすすめていくうちに、「ことばと思考」の関係について着目していくようになります。
 私達が会話をする時、まず現実の物事や現象と向き合い、それを頭の中(思考)で整理し、その上で言葉として表現するものです。そしてこれらは思考から言葉へ、また言葉から思考へと互いに移行しあっています。例えばヘレンがサリバンと波止場のそばにあった泉を「感じた」時、「リスのカップ」(squirrel-cup)と表現しました。これはリスがここに水を飲みに来るというサリバンの話から、彼女はリスの水飲み場という意味を込めてそう言ったのでしょう。ここで注目して頂きたいのは、ヘレンは泉や水飲み場といった適切な表現を使わずにカップと言いました。恐らくこれは適切なことばを知らなかったことと、彼女の詩的な世界観がこのような表現を生み出したのです。まさに彼女の思考が彼女独自のことばを生み出しています。
 ですが現段階でのヘレンの表現が拙いのも事実です。そこでサリバンは彼女の表現した言葉を受けて、単語や文章を補います。こうすることで彼女の思考は新たな単語や表現で満たされていくのです。つまりこれは先程の思考から言葉への逆の流れを辿っています。
 そしてこうした交通を経ることによって、ヘレンの思考はより豊かになり、語彙も増えていくことでしょう。ですからサリバンは、「ことばが思考を生むとは何てすばらしいことでしょう!」と述べていたのです。

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