2013年11月19日火曜日

ヘレン・ケラーはどう教育されたかー1887年4月24日

  前回の手紙では、ヘレンは言葉が話せそうで話せない、ちょうど曖昧な段階にありましたが、今回の手紙では拙いながらも言葉でサリバンと会話している様子が綴られています。そしてこのヘレンの教育成果から、以下の2つの事が読み取れるでしょう。
 ひとつはヘレンの理解できる範囲に合わせて彼女に話しかけてきた、サリバンの目とその方針の確かさ。
 そしてもうひとつは、ヘレンが動物的な段階から完全に決別し、人間的な社会性を身につけつつある、ということです。サリバンはこれをひな鳥が空を飛ぶことに例えて、たった一文で説明しています。
 私達が人間の社会で生きていく上で最も重要な能力とは、コミュニケーション能力に他なりません。それは学校で友達と話す時、仕事で依頼を請け負う時、買い物をする時、家族に自分の意思を伝える時等、人間として暮らす上では欠くことの出来ない能力なのです。しかしヘレン場合、これまで自分の意思を一方的に汲み取らせる事で、その必要性を無視してきました。否、知ることもなかったはずです。ですがサリバンとの数週間の暮らしによって、服従という社会関係を学んできた事によって、自分のやり方以外で交渉する術を学ばなければならないことを自然と知っていったのでしょう。これは力関係が自分よりも上の者とやりとりする場合、相手の意図を知り、従う必要があるからです。
 また指文字の存在も忘れてはなりません。サリバンは事あるごとにヘレンの掌に指文字を書き、そのものの名前や現象を教えていました。そして、ヘレンがそれを言葉として受け止めた時、今度は指文字で話しかけはじめました。このようにして、サリバンはヘレンに言葉の存在とその使い方について教えていったのです。
 こうしてヘレンは自然と自分とは違った交渉の仕方を学んでいく過程の中で、言葉というコミュニケーションのあり方にいきついたのでした。

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