2012年9月7日金曜日

いぼ−新美南吉

 去年の夏休み、小学生の松吉とその弟の杉作のところに、いとこで町の子どもである克己が遊びにきました。彼らは家が離れていたためにもともと深い交流はなかったのですが、池で漂流しかけたために、3人で力を合わせて難を乗り越えたことをきっかけに強い絆を結んだように思われました。
 その後日、松吉と杉作はお母さんに頼まれて、克己の家までおつかいに行くことになりました。2人は夏休み以来克己に会っていなかったので、彼との久しぶりの再会と、また彼のお父さんから小遣いを貰うことを楽しみにしながら出かけて行きました。しかし彼らを待ち受けていたいたのは、予想だにしない出来事でした。

 この作品では、〈いかなる事があろうとも気丈に振舞っている、子どもの底抜けの明るさ〉が描かれています。

 上記にあるように、2人は克己との再会と小遣いを貰える事を楽しみにしていました。ですが克己は克己で、松吉と杉作と貴重な体験を共有したにも拘わらず、彼らの事を忘れたような素振りを見せました。2人はそれにショックを受けて、小遣いを貰わずに帰っていってしまいます。しかし、帰りの途中、彼らは「きょうのように、人にすっぽかされるというようなことは、これから先、いくらでもあるにちがいない。おれたちは、そんな悲しみになんべんあおうと、平気な顔で通りこしていけばいいんだ。」という結論に至り、ふざけ合いをはじめます。ここに、この作品の力強さがあるのです。
 私達大人は職場や家庭など、様々な場所で様々な問題を抱えながら生きています。そのような中で、押しつぶされそうになる場面もいくらかあることでしょう。そうして生きていっている私達に、この作品に登場する子供たちは素朴で子供らしい発想ながらも、ひとつの答えを身をもって示してくれています。ですから、私達はこの作品を読み終えた後、子供の気丈なまでの明るさに感心せずにはいられなくなっていくのです。

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