ある日、秋子は軍馬とぶつかりそうになったことをきっかけに、その馬の主である小野田という男と知り合いになります。そして、この出会い以来、彼は何かにと理由をつけて牛乳を彼女の家まで届けることとなりました。そしてこの謎の男との出会いは、秋子の家族に異変をもたらします。特に彼女の姉である夏子は、彼が運んでくる牛乳は馬の臭いがする、夜、何も音がしないにも拘らず、馬の足音が聞こえてくる等と言い、小野田を意識している節がありました。
ですが、このような生活にも、別れの時が刻々と近づいていました。秋子の一家は今住んでいる土地を去り、東京に帰ることになっていたのです。そこで夏子と母は、彼をお食事に招こうという事を話し合っていました。これに関して、秋子は内心反発していましたが、結果的に自分から、彼を招いてしまうこととなってしまいます。
翌日、彼は彼女の家を訪れました。ですが、夏子の様子がいつもとは違い、妹の秋子ですら、姉から氷のような冷たいものを感じとらずにはいられませんでした。やがて姉は冷たい口調で、「わたし、小野田さんに伺いたいことがありますから。」と言って他の者を追い出してしまいます。そしてその内容とは、そもそも小野田は夏子の恋人の友人ではないのか、ということです。姉は彼の正体について薄々感づいていたのです。更に彼の方でも、その恋人から夏子に向けて、「愛も恋も一切白紙に還元して、別途な生き方をするようにとの切願だった。ついては、肌身離さず持ってた写真も返すとのこと。」との伝言を依頼されていました。しかし、この伝言を聞いて夏子は倒れてしまい、それが災いしたのかやがて死んでしまいました。
この作品では、〈事実を伝えようとしないこと、知ろうとしないことがいい事もある〉ということが描かれています。
はじめに、秋子は、姉が死んでしまったことに対して、下記のような憤りを述べています。
「わたしは小野田さんを憎む。あのひとは本質的にはまだ軍人だ。軍馬種族だ。それについての憤りもある。わたしたち、お母さまもお姉さまもわたしも、まだ甘っぽい赤ん坊だ。ミルク種族だ。それについての憤りもある。」
では、これらはそのぞれのどのような行動、または態度を見て避難しているのでしょうか。まず、上記の憤りは、「結果的に」姉が死んだことに対して、彼女が事実を知ったために死んだのだと考えている事から感じているものなのです。そして小野田に対しては事実を告げようとした、その態度を非難しています。彼は姉が病気であると知り、恋人の伝言を伝えようか否かを迷っていました。ですが、それでも最終的には姉にそれを伝えてしまった為に、またそこから、軍人が上官の命令に対して、苦悩しながらもそれを実行する様を彷彿した為に、秋子は彼を「本質的には軍人」なのだと評しているのです。
では、一方の秋子達達、一家の態度についてはどうでしょうか。それについても、やはり彼女は憤りを感じています。姉は小野田が何か隠している事は知りつつも、その中身に対しては深く考えていませんでした。母は何も考えず、彼を招いてしまいました。秋子は秋子で、彼に心を許して小野田を家に入れてしまいました。これらの警戒心のなさから、自分たちを「まだ甘っぽい赤ん坊だ。ミルク種族だ。」と称し、避難せずにはいられなかったのです。
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