今回、ヘレンはことばの使い方で決定的な進歩を遂げたようです。彼女は先日、サリバンとハンツヴィルの近くにあるモンテサノ山の頂上までドライブした事をお母さんに話していました。この時、ヘレンはサリバンが自分に山の景色を説明したそのまま、一字一句変えずに話していたと言います。恐らく彼女の頭の中では、そうした景色のようなもの(ヘレンは視覚聴覚がないため、頭の中に描かれる映像も、私達とは質的に違うのだということを押さえておかなければなりません。)ぼんやりとおぼろげながらにもかすかに見え、またそうかと思えば再び霞み、そうかと思えば見えはじめという流れが繰り返されていた事でしょう。ところがある時点から、以前よりもそうした景色が明確なものとして現れてくる瞬間があったはずです。それが見えた時、ヘレンはお母さんに「とても高い山ときれいな雲の帽子」を見たいかと尋ねました。事実括弧書きの表現は、サリバン自身、一度も彼女に話したことはないといいます。
この体験から、ヘレンは目が見えない、耳が聞こえないなりの、感覚的な、彼女なりの表現を手に入れかけたと見てよいでしょう。
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