2016年1月21日木曜日

捨児ー芥川龍之介(あらすじのみ)

 浅草の末永町にある信行寺の和尚、日錚は、寺の前に捨てられていた捨児を育てることにします。そして彼は自分の仕事の傍ら、勇之助と名付けたこの捨児を大事に育てていました。しかしその一方では、出来ることなら本当の母親に合わせてやりたいとも思っていたのです。

 そんなある年の冬、和尚のもとに三十四五の女性が訪れます。話を聞くと、彼女は捨児の母親であり、家が株に手を出したばかりに夜逃げし、我が子を手放さなければならなくなったというのです。その後夫は運送屋に奉公へ、女はある糸屋の下女として働き、やがては生活にも余裕がでてきはじめます。
 ところが、そんな夫婦にも不幸が襲いました。夫はチブスにかかり一週間もしないうちに亡くなり、子供も夫の百ヶ日も明けないうちに命を落としたのです。途方に暮れた彼女は、半年泣き続け、その後捨児の事を思い出し、寺に参上したのでした。そしてその時、和尚の蓮華夫人の説教を聞き、より思いを強くしたのだとも云います。
 こうして捨児は実の母親に引き取られ、幸せに暮らしていたように思われました。

 ところが、その女というのは、実は勇之助の本当の母親ではなかったそうです。成長した勇之助は、母親の死後、ひょんな事から母親の素性を知ることになりました。株のことや運送屋のことは嘘ではないようですが、実際にいた夫婦の子どもというものは女の子で、なんと既に死んでいたというではありませんか。

 しかし、そのような真実を知ったところで、勇之助の母親への愛情は変わらず、寧ろ一層懐かし思うようになったのだといいます。そして彼曰く、事実を知った時、彼の中で女は母親以上の人間になったのだとも言うのです。

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