著者は昨年、十年ぶりに里帰りを果たしていました。その翌年、彼の母親が危篤になっていることをきっかけに、津島と昔から懇意にしている「北」と「中畑」という人物の計らいによって、家族を含めた二度目の故郷帰りを行うこととなりました。
しかし著者は、地元有力者の家に生まれながら芸妓と結婚したことをきっかけに長兄から勘当させられており、その後も左翼活動、度重なる自殺未遂によって、家族を困られている過去を持っています。ですから彼は家族に合わせる顔も持ちあわせておらず、やや乗り切らない様子です。ですが、それでも「北」や中畑顔を立てようとして、彼は里帰りを決意していったのでした。
ですが一方で津島家の方でも、母の危篤をきっかけに著者に帰ってきてもらおうという話になっており、行き違いで次兄が電報を打ったところだったのです。
その結果、著者は家族の中に加えてもらう事が出来、使命を果たした付添人の「北」は東京へ帰ることとなったのですが、長年家族の悪人でいた彼は、今更どのような顔で家族と向きあえば分からず、無作法によって兄たちを怒らせることを恐れて、ただビクビクとするばかりなのでした。
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