今回の手紙では、冒頭に2人は「つたみどりの家」と呼ばれている、ケラー屋敷から1/4マイルばかり離れたところにある一軒家に暮らす事になったことが報告されています。というのも、これは、サリバンがヘレンを家族と一緒に暮らした儘では真っ当な意味での教育は望めないと考えたからに他なりません。
ヘレンを取り巻く家族たちは、家の中に争い事を持ち込みたくないが為に、兄のジェイムズ以外、これまで誰も彼女の意思に本気で逆らおうとはしませんでした。彼女と家族との社会関係というものは家族の努力でのみ成立してきたのです。つまりヘレンの社会性というものは全く育っておらず、彼女はただ欲求を満たすことだけに専念すれば良いことになります。そして、こうした環境でいくらサリバンが熱心に教育しようとしても、当然彼女はそれをうまく受け取ることは出来ないでしょう。
そこでサリバンは、彼女をそうした環境から一度離し、力をもって服従させようとしました。そうすることで、自分の意思だけではうまくいかない、思い通りにならない事、自分と同じ、あるいはそれ以上の意思が存在することを理解させ用としたのです。そしてそれらを理解する中で、彼女は他人や社会というものの存在を徐々に、少しずつ意識していく事でしょう。
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