この作品ではタイトルにもある通り、アン・サリバンによるヘレン・ケラーへの実践記録を中心にして、ヘレンがどのように教育されていったのかが描かれています。その中でサリバンは、彼女が人間的な感情を一切持ちあわせておらず、ただ快不快だけがある野生の動物のようであると規定しました。そしてこの野生児を制服をすることで教育の土台をつくり、言葉を獲得させることで知性をあたえていったのです。
そこで、ここでは具体的にサリバンがどのようにして上記のような方針を固め、具体的な実践に至ったのかを彼女の記録のひとつひとつを見ながら確認していきたいと思います。
サリバンとヘレンが最初に出会った日、サリバンは彼女がどのような人間であるのかをじっくり「観察」していました。ここで注意しなければならないのは、「観察」というとなんだか受動的な意味合いが強いようなイメージがありますが、彼女のそれはあくまで教育という実践を前提とした積極的なものなのです。というのも、彼女はヘレンに指文字を感じさせたり、ビーズを糸に通させたりして、彼女は何が出来るのか、何について興味があるのかを探し当てようとしたのでした。その結果、ヘレン・ケラーという女の子は知的ではあるが、人間的な感情の機微については他の子ども達に比べて乏しい少女であるという結論に至ったのです。
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