子供好きの娘、袖子は高等小学校を終わるか終わらないかのぐらいの年頃になった頃、「とても何かなしにはいられな」い衝動を感じはじめます。その時分から、彼女は別の近所の子供を抱いてきて、自分の部屋で遊ぶようになります。ですが、袖子は自身が初潮を迎え大人になっていくことを自覚しはじめた途端、彼女はそれまで可愛がっていた子供に対して、別の異なる印象を持ちはじめ、以前のように抱くことができなくなっていきます。一体彼女は初潮を迎え、何を感じているのでしょうか。
この作品では、〈子供から大人への成長を感じはじめると共に、親からの自立を感じはじめるある少女〉が描かれています。
まず、袖子の父は、彼女に対して人形を扱うように接していた節があり、彼女に対して、なんと彼女ではなく自分の好みの服、好みの人形を与えていたのです。そんな父の姿を見て、彼女は自身が愛する子供に対しても同じように接していました。
しかし、袖子が初潮を迎えると共に、この父娘は自分がそれまで愛していたものへの印象を徐々に変えていくことになります。父はそれまで何でも自分の思い通りになっていた愛おしい人形娘に対して、徐々に彼女が人形(子供)ではなくなり、自らの手から離れていくことを感じていきます。そして一方の娘の袖子も、「さものんきそうな兄さん達とちがって、彼女は自分を護らねばならなかった。」の一文からも理解できるように、自らの大人としての自立を感じています。これは、今まで今まで父の人形として生きてきた彼女にとって、人形以外の生き方を強いられるわけですから、大なり小なり不安なものであるに違いありません。ですが、あくまで大人になりつつある段階なのであり、彼女はまだ子供でもあります。この中途半端な立場から、袖子はそれまで愛してた子供を見た時、羨ましい気持ちを感じると共に、やがて彼らも自分と同じように、彼女ものとから離れ、自立していくことを悟り、これまでのように抱けなくなっていったのです。
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