2016年2月2日火曜日

風ばかー豊島与志雄(あらすじのみ)

一般性、及び論証は後日改めて書いておきます。

 ある時、学校で先生が言った、「人間は正しく左右対称ではないために、目を瞑った儘、真っ直ぐ歩くことはできない」という発言を受けて、子どもたちは放課後本当に真っすぐ歩けないのか野原で実証してみることにしました。
 しかしそうした実験は、やがて子供達の競争心に火をつけて、誰が最も目を瞑った儘真っ直ぐ歩けるかというゲームに変わっていきます。そしてその中で唯一、まっすぐ歩くことができた「マサちゃん」は、他の子供達の賞賛を受けて、自ら指導する立場をとっていったのです。
 やがて夕方になって練習も終わろうとしていた時、「マサちゃん」はもう一度皆の前で見本を見せようとしました。ところが、まさちゃんが真っ直ぐ歩いていた時とは違い、野原には風が吹いています。風は「マサちゃん」を妨害するように吹きますが、それでも彼はめげません。するとそのうち、「マサちゃん」の耳元で「ばかー、ばかー」と言ってくる「もの」があります。それは風だったのですが、なんとこの空耳を受けて、「マサちゃん」は風に本当に馬鹿にされたのだと勘違いして、風に向って怒鳴り出したのです。

 そして家に帰って彼は、両親に今日あった出来事を話しました。すると「お父さん」は、
「それは、お前の方がばかだよ。風にさからってもつまらない。風というものは、強くなったり弱くなったり、息をついて吹くから、その中をまっすぐに歩くのはむずかしいよ。木の葉だって、まっすぐに落ちたり、ななめに吹きとばされたりしてるじゃないか」
 と指摘しました。「マサちゃん」は聞き返します。
「風って、息をするんですか」
「うむ、息をするよ。息をするというより、風は息なんだよ」
「なんの息?」
「なんの息って……。どういったらいいかなあ、空気の息、神様の息、いろんなものの息……ただ息だよ」
「ただ、息だけ?」
「息だけだよ」
「ばかな奴だな」
 そうした「まさちゃん」の発言を聞いて「お父さん」は声高く笑いました。そしてそれに続く形で、「マサちゃん」もお母さんも笑い出します。そしてガラス戸の外で風が吹いている事を確認すると、「マサちゃん」は、「ばかな風だな」と言って晴れ晴れと笑ったのでした。

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