2012年8月24日金曜日

蟹のしょうばいー新美南吉

 ある時、蟹はいろいろ考えた挙句、とこやをはじめる決心をしました。ところが、自分より大きな生き物である狸から仕事を引き受けたところ、3日かかってしまいました。ですが、今度はその狸から自分よりはるかに大きいお父さんの毛も刈って欲しいと言われてしまいます。そこで、自分一人ではそれは大変なことだと考えた蟹は、自分の子供達みんなをとこやにしたのでした。こうして蟹という生き物は、手にハサミを持つようになったのです。

 この作品の特徴は、〈大人が自分たちが理解出来ていない、或いは出来ていても説明できない物事を子供たちの理解できる範囲で説明している〉というところにあります。

 私達が子供から質問を受けた時、しばしば困らされた、或いは自分が子供の頃に大人達を困らせてしまったことはないでしょうか。地球は何故存在するのか。どうして朝と夜があるのか。私達は何故5本の指を持っているのか……。これらの質問を子供たちは多くの場合、決して大人達をからかって聞いているのではなく、純粋な好奇心から聞いている事でしょう。ですから、子供の教育する立場である私達としては、そうした質問に誠実に答えてあげたいものです。しかし、子供達はしばしな私達ですら理解できていない事、説明出来ない事を聞いてくることがあります。
 そこで、私達にはどうしてもこの作品のような、現実とは違った世界観をもつことが必要となってきます。そして、こうした世界観は子供達への説明に一定の説得力を持たせる手助けとなるはずです。やがてこうした説明は子供達が自分自身で物事を考えられるようになるまで、考える土台として機能する事でしょう。

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