日露戦争時、日本軍は雪が降るシベリアの地を攻略するため、地元の馭者達を利用しました。日本人は彼らに、少し荷物を運ぶだけだからと嘘をついて、自分たちと共に戦地へと赴かせたのです。こうした依頼には、馭者の1人である「イワン」も警戒はしたものの、結局はお金と彼らの話術によって騙されてしまいました。
一方日本軍側では、兵卒である「吉原」は、大隊長や戦争について、いくらか疑問を感じていました。彼は大隊長のお世話をする、従卒をした経験から、将校が食べる食事と兵卒のそれとには大きな違いがあることを知っていたのです。また吉原は自分の容姿が大隊長の眼鏡に適ったことから、従卒に抜擢されたことも知っており、将校達にこれほどの権限が本当にあるのかと考えるようになっていったのでした。
また、家畜を徴発されたシベリアの農家の人々や戦争に巻き込まれて死ななければならなかったシベリアの人々に同情し、一体何の為の戦争なのかを考えずにはいられなくなっていきます。
そしてそんな馭者と日本軍は、いよいよロシア軍と交戦します。激しい戦闘が一時間ほど続いた後、日本軍は勝利しました。
しかし、吉原は戦争に巻き込まれて無残にも自軍によって殺されてしまった子父を見て、
「戦争をやっとるのは俺等だよ。」
と言って、他の兵卒と共に戦争を放棄しようとします。
しかしそれを知った大隊長は、吉原が拍車を錆びさせたこと、自身が大佐の娘に熱中していることを言いふらしたこと等の私怨から、「不軍記な!何て不軍記な!」と言って、彼を痛めつけます。
一方それを見ていたイワンは、戦慄し、日本軍に騙され憤慨している他の馭者たちと共にその場を去ってしまいます。取り残された大隊長はそれを部下の不注意のせいにしました。ところが、兵卒は兵卒で、捨て駒として彼らをシベリアに寄越した者の手先となって、彼らを酷使した大隊長に自然と銃剣を誰もが突きつけたのです。